「その1」では、数学の問題を解くときの「着想」とは、

問題に書かれている「特徴」を手掛かりに、「さらに分かることがないか」と考えを進めていくこと

だとお話ししました。

しかし、この言葉だけを述べてもピンと来ないかもしれません。そこで、問題に書かれている「特徴」に焦点を当てて、もう少し詳しく解説したいと思います。

まず、次の問題を見てください。

こんな問題、答えようがありませんよね?

この三角形は私がテキトーに描いたものです。三角形という以外、これといった特徴がありません。角Bの大きさを知るためには、分度器で測るしか方法はありません。

このような、何の特徴もない図形が数学の問題に登場することはまずありません。言い換えれば、数学の問題は、数式にせよ、図形にせよ、必ず何かしら特別な性質を持ったものが登場します。私はこれを問題の「特徴」と呼んでいます。

例えば三角形であれば、直角三角形は数学の問題によく登場しますよね?この場合、「着想」というのは

直角三角形という「特徴」を手掛かりに「さらに分かることがないか」を考えること

になります。

しかし、ここで一つ質問です。そもそも直角三角形の「特徴(=特別な性質)」って何でしょうか?「角の一つが90°」というだけではダメですよ。以下に∠Bを直角とする△ABCを示しますので、考えてみて下さい。あなたは特徴をいくつ挙げることができますか?

まず直角三角形なので、三平方の定理(\( AB^2+BC^2=CA^2 \))が成り立ちますね。

また、直角Bから辺ACに垂線を下した交点をDとすると、△ABD、△BCDはいずれも△ABCと相似の直角三角形になります。

さらに、ACの中点をEとすると、AE=CE=BEとなります。これは、点Bを原点にABをY軸、BCをX軸に重ねて点Aを(0, a)、点Cを(c, 0)とすると、点Eは(\(\frac {1}{2} \) c, \(\frac {1}{2} \) a)となるので、各々の距離を計算すると分かります。

あるいは、ABCの各点を通る円(外接円)を描くと、角Bが直角であるためACは円の直径、Eは円の中心になることからもAE=CE=BE(=円の半径)を導けます。

このほか、△ABCが以下のように∠Pと∠Qがいずれも直角の長方形などの中におさまっている場合、△APBと△CBQは相似になります(をつけた角と〇をつけた角の和が90°になります)。これは直角三角形自体の特徴ではないのですが、他の図形と組み合わせた場合の特徴として、入試問題でもよく見かけます。

問題を解くための手がかり(着想)に辿り着く上で、数式や問題の「特徴」を理解し、知っておくことはとても重要ですし、効果的です。言い換えると、「特徴」は問題を解くために必ず使う「ヒント」でもあるワケです。

また、問題に示されている「特徴」は、すべて使い切ることも重要です。問題の中に2つの特徴が挙げられていたら2つとも使う必要があるし、3つ挙げられていたら3つとも使う必要があると考えましょう。(出題者が、解くために使う必要のない特徴をワザワザ挙げることは、基本的に無いと考えてください。)

今後、このような数学の問題を解く上で重要な様々な「特徴」を、「着想のモト」というコーナーで整理していきたいと思います。是非お楽しみに!